大判例

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札幌高等裁判所 昭和25年(ナ)1号 判決

原告 中村謙次郎

被告 様似村選挙管理委員会

一、主  文

様似海区漁業調整委員会委員の選挙に関し被選挙人住岡政悦より被告になされた異議申立に対する昭和二十五年九月五日付被告の決定を取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告は主文同旨の判決を求め、その請求原因として、昭和二十五年八月十五日執行の様似海区漁業調整委員会委員選挙において、開票管理者は開票直前に開票立会人に対し公職選挙法第六十七條の趣旨により同法第六十八條第五号、漁業法第九十一條第五号但書の規定の適用について屋号は如何に取扱うかとの意見を徴したところ屋号は職業、身分、住所又は敬称の類に該当しないと全員の意見が一致して屋号の記載ある票は無効とすることに決定した、開票の結果は原告は得票六十八票を以つて十一位で当選し住岡政悦は得票六十五票で落選したところ住岡政悦は選挙会が住岡政悦と記載ある票を無効としたのは、これは住岡政悦に投票されたことが明瞭であるから有効とすべきであるとの要旨で被告に対し選挙会の決定は不当であると異議申立をした然るところ被告は屋号は候補者の氏名に代るものと判定し且つ氏名の上に屋号を附したものは被選挙人を一層明瞭にしようとする選挙人の意思表示であるとして次の票を有効とした。

1.フミオと記載された投票   一票

2.住岡政悦と記載された投票  三票

3.住岡政一と記載された投票          一票

右は住岡政悦の投票として有効

1.中村と記載された投票    一票

ナカウラケンジロと記載された投票 一票

右は原告の投票として有効

以上によつて選挙長が決定した住岡政悦の得票数六十五票は七十票と、原告の得票数六十八票は七十票と決定し且つ十一位当選人に決定した原告の当選は住岡政悦がその得票数と同じ得票数となつたのでこれを取消し十一位当選人の決定については公職選挙法第九十五條第二項を準用する漁業法第九十四條によつて得票数が同じである住岡政悦と原告の二人につき選挙会において選挙長がくじで定めなければならないものとすると決定した。

右のように被告はフミオと記載ある一票を被選挙人住岡政悦の票として有効としたが、被告が屋号をもつて氏名に代わるものと判定し且つ住岡政悦に全然関係のない字句であるフミオという文字の記載あるに拘わらずこれを有効としたのは明らかに法を無視した決定である。とは住岡政悦の屋号で通称といえば同人のことをいうのであり、またこの選挙において被選挙人中屋号をと呼称する者及び氏を住岡と称する者は住岡政悦一人であり同人は、被選挙人としてという屋号を届け出ているが「フミオ」という別名、あだ名、通称等は全然ないからという屋号が冠してあつてもその投票は被選挙人住岡政悦の投票として有効と認めたのは違法である。

よつて被告に対し利害関係を有する原告は全面的に不服であるので本訴に及んだと陳述した。

被告は原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、その答弁として原告の主張事実中開票管理者が屋号の記載ある票は無効にすると事前決定をした事実を否認しその他の事実は認めるが原告が無効であると主張するフミオと記載された一票は被選挙人住岡政悦の投票として有効である被告は、右投票は十分に文字を記載することができない選挙人が投票記載所において記憶をたどつてスミオカの投票を記載しようとしたが十分に記憶をよびおこすことができず遂にスをフと誤記しまた末尾にカを必要とするものであることを失念した結果によるものと認めこれを住岡政悦の有効投票と決定したものであると陳述した。

三、理  由

昭和二十五年八月十五日施行された原告主張の選挙において開票の結果原告は得票六十八票をもつて十一位で当選人とされ訴外住岡政悦は得票六十五票で落選したところ、住岡政悦は右当選の効力に関し被告に対して異議を申立て、被告は同年九月五日右有効得票の外係爭のフミオと記載された一票外四票を住岡政悦の投票として、二票を原告の投票として有効と認めた結果両名の得票が同数となつたので原告と住岡政悦の二人につき選挙会において選挙長がくじで定めなければならないものとすると決定した事実は当事者間に爭がない。

原告は、右フミオと記載された投票は住岡政悦の投票として無効であると主張するので、この爭点について考えるに、漁業法第九十條第三項には、投票は選挙人が自ら投票所に行き投票用紙に候補者一人の氏名を自書して行わなければならないと規定し、また候補者の氏名を自書しない投票及び候補者の氏名以外の事を記載した投票(職業、身分、住所又は敬称の類を記入したものを除く。)が無効であることは同法第九十一條第五号及び第六号の規定によつて明らかである。ところで係爭フミオと記載した投票は住岡政悦の氏名を記載したものということができないのであつて、が住岡政悦の通称化した屋号である事実は当事者間に爭がないけれども、この事実はがこの投票の氏名以外の他事記載として許されるというにとゞまつて、フミオの記載が到底住岡政悦の氏名の記載として認め難く右投票は無効である。この判断はこの選挙において被選挙人中屋号をと呼称する者が住岡政悦一人であり、また同人が被選挙人としてという屋号を被告に届け出ているという事情によつて左右されるものではない。なお右投票以外に原告が主張する住岡政悦の投票四票及び原告の投票二票がいずれも有効であることは原決定の通りであつて、原告に異議のないところであるから、結局原告の得票は七十票、住岡政悦の得票は六十九票となるわけで、明らかに当選の効力に影響を及ぼし、被告のした決定は違法であるのを免れない。

よつて、行政事件訴訟特例法第一條、民事訴訟法第八十九條、第九十五條を適用し、主文の通り判決する。

(裁判官 浅野英明 藤田和夫 篠田吉之助)

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